人間関係

「推し活バカにしてた私が間違ってた」3.5兆円市場と1400万人が証明する”推し”の正体

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心理学が証明する推し活の5つのメリット

「バカバカしい」と切り捨てる前に、心理学や脳科学の研究が明らかにした推し活のポジティブな効果を知っておく必要があります。

メリット1:幸福度の向上とドーパミン分泌

野村総合研究所の調査では、推し活をしている人の幸福度は、していない人の20.9%に対して31.8%〜42.2%と明らかに高いことが判明しました。

これは脳科学的にも説明できます。推しの活動を見たりグッズを手に入れたりすると、脳内で「報酬系ホルモン」と呼ばれるドーパミンが分泌されます。大脳生理学者の久保田競氏によると、このドーパミンが「もっとやりたい」という意欲を駆り立て、前向きな気持ちを生み出すのです。

メリット2:ストレス軽減と気持ちの切り替え

日本メンタルアップ支援機構の代表理事・大野萌子氏は、推し活が優れたストレスコーピング(ストレス対処法)になると指摘しています。

現代人は仕事や人間関係で常にストレスにさらされています。同じことを考え続けると心の不調につながりますが、推し活は好きなものに集中する時間を作ることで、気持ちの切り替えを助けてくれます。自宅にいながら画面や仮想空間で現実からシフトできるのも、コロナ禍以降の推し活人気の理由です。

メリット3:自己肯定感と承認欲求の充足

九州大学名誉教授の増田健太郎氏は、推し活がマズローの欲求階層説における高次の欲求(承認・自己実現)に深く関係していると説明します。

推しが認められると自分も社会に認められた気持ちになり、推しの成功が自分の努力が報われたように感じられます。これが生きがいやモチベーションの向上につながるのです。特に「推し広告」を出して推しを宣伝する活動では、自分の貢献が可視化されることで強い達成感を得られます。

メリット4:孤独感の解消とコミュニティ形成

コロナ禍で対面のコミュニケーションが減り、孤独感を抱える人が増えました。推し活はSNSを通じて同じ趣味を持つ人と簡単につながれるため、孤立感の解消に大きな役割を果たしています。

共通の推しについて語り合ったり、ライブで一体感を味わったりすることで、特別な絆が生まれます。趣味で出会った友人が生涯の親友になることも珍しくありません。

メリット5:安全な疑似恋愛体験

公認心理師の説明によると、推し活は一種の疑似恋愛のような作用があります。現実の恋愛と違い、相手に思いを届けたり気持ちを慮ったりする必要がなく、失恋に傷つくリスクもありません。

エンターテイメントの範囲内で好きなだけ推しを愛し、安心安全に恋愛気分を味わえるのが推し活の良さです。シングルの人には将来の本物の恋愛に向けた心の準備になり、パートナーがいる人には日常のときめきを取り戻す手段になります。

推し活の5大メリット

1. 幸福度UP
推し活をする人の幸福度は最大42.2%
2. ストレス軽減
気持ちの切り替えと心のリフレッシュ効果
3. 自己肯定感向上
推しの成功が自分の誇りに
4. コミュニティ
同じ趣味の仲間と深い絆を形成
5. 安全な疑似恋愛
失恋のリスクなく恋愛気分を楽しめる

これらのメリットは科学的根拠に基づいたものであり、決して「バカバカしい」と一蹴できるものではありません。推し活は現代人の心の健康を支える重要な文化になっているのです。

「お金の無駄」は本当か?価値観の多様性を考える

推し活への最大の批判である「お金の無駄」という指摘について、冷静に考えてみましょう。

他の趣味と比較した場合の推し活支出

「推し活にお金をかけるのは無駄」という意見は、言い換えれば「その価値が理解できない」ということです。しかし価値の判断は極めて主観的であり、他人が決められるものではありません。

趣味の種類 月平均支出 年間支出
推し活 約1万円未満(73.8%) 平均25.5万円
ゴルフ 約2〜3万円 24〜36万円
旅行 約2〜4万円 24〜48万円
車・バイク 約3〜5万円 36〜60万円
外食・グルメ 約2〜3万円 24〜36万円

この比較表を見ると、推し活の支出は他の一般的な趣味と比べて決して高額ではないことがわかります。むしろゴルフや車などと比べれば控えめな金額です。

スニーカーを何足も集める人、高級レストランを巡る人、海外旅行を頻繁にする人。それぞれが自分の価値観に基づいてお金を使っています。推し活も同じで、本人が幸せを感じているなら他人が「無駄」と決めつける権利はないのです。

「体験」にお金を使う時代へ

現代の消費トレンドは「モノ消費」から「コト消費」へと移行しています。推し活はまさに体験や感情を消費する活動であり、時代の流れに沿ったものだと言えるでしょう。

ライブで感じた一体感、推しの言葉に励まされた瞬間、ファン同士で分かち合った感動。これらの体験は確かに形には残りませんが、人生を豊かにする大切な思い出として心に刻まれます。それは旅行の思い出や美味しい食事の記憶と何も変わりません。

健全な推し活のための3つのルール

もちろん、無計画な出費や生活を犠牲にする推し活は避けるべきです。長く楽しむためには、以下のルールを守ることが重要です。

  • 予算を決める:月々の推し活費用の上限を設定し、生活費を圧迫しない
  • 借金をしない:クレジットカードの分割払いや消費者金融には手を出さない
  • 他の人間関係も大切にする:推し活だけに時間を費やさず、現実の人間関係も維持する

九州大学名誉教授の増田健太郎氏も「一番大切なのは、自分の経済力に見合った範囲で楽しむこと」と強調しています。無理のない範囲で長く続けられる推し活が理想です。

推し活を理解できない人へ:共存のためのヒント

推し活を理解できない、興味が持てない。それは決して悪いことではありません。大切なのは異なる価値観を持つ人々がどう共存するかです。

理解できなくても尊重することは可能

文化評論家の佐々木敦氏は「理解することと同意することは別」だと述べています。推し活の魅力がわからなくても、それを楽しむ人々の気持ちを否定せずに尊重する姿勢が大切です。

家族や友人が推し活をしている場合、その活動を批判するのではなく、「あなたにとって大切なものなんだね」と認めてあげましょう。相手の情熱を受け止めることで、より豊かな人間関係が築けます。

適切な境界線の設け方

一方で、推し活の話題を延々と聞かされるのが苦痛な場合もあるでしょう。そんなときは適切な境界線を設けることが効果的です。

  • 「推し活は楽しそうだね。でも私はあまり詳しくないから、別の話題にしよう」と丁寧に伝える
  • SNSで推し活専用アカウントにあえて踏み込まない配慮をする
  • 共通の別の話題を見つけて、そちらで交流する

デジタルコミュニケーション専門家の高橋明子氏は「すべての投稿に反応する必要はなく、共感できる内容に絞ってコミュニケーションを取ることも一つの方法」とアドバイスしています。

多様性を認め合う社会へ

推し活文化に対して「理解できない」という感覚を持つこと自体も、現代社会において正当な一つの立場です。誰かを熱烈に応援することも、それを理解できないことも、共に尊重されるべきでしょう。

大切なのは、自分の価値観を絶対視せず、他者の選択を認めること。推し活をする人もしない人も、お互いの違いを認め合うことで、より豊かで多様性のある社会が実現します。

まとめ:「バカバカしい」を超えて

推し活に対する「バカバカしい」という意見の背景には、価値観の違いや共感ギャップがあります。しかし客観的なデータを見ると、推し活は1400万人が楽しむ巨大文化であり、心理学的にも幸福度向上やストレス軽減といった効果が証明されています。

お金の使い方についても、他の趣味と比べて決して高額ではなく、多くの人が生活とのバランスを取りながら楽しんでいます。大切なのは、理解できない文化を否定するのではなく、多様な価値観を認め合うことです。

推し活をする人もしない人も、お互いの選択を尊重し合える社会を目指していきましょう。あなたにとって大切なものを誰かが「バカバカしい」と言ったら、どう感じるでしょうか?その想像力が、共存への第一歩になるはずです。

FAQ(よくある質問)

Q
推し活は本当にお金の無駄なのでしょうか?
A

価値の判断は主観的であり、本人が幸せを感じているなら無駄とは言えません。推し活の月平均支出は73.8%の人が1万円未満で、ゴルフや旅行など他の趣味と比べても決して高額ではありません。大切なのは自分の経済力に見合った範囲で楽しむことです。

Q
推し活にはどんなメリットがあるのですか?
A

心理学的には5つの大きなメリットがあります。1)幸福度の向上(推し活をする人は幸福度が最大42.2%)、2)ストレス軽減と気持ちの切り替え、3)自己肯定感と承認欲求の充足、4)孤独感の解消とコミュニティ形成、5)安全な疑似恋愛体験です。これらは科学的研究で証明されています。

Q
推し活を理解できない自分は冷たい人間ですか?
A

いいえ、理解できないこと自体は問題ありません。人には様々な価値観があり、すべてを理解する必要はないのです。大切なのは理解できなくても相手の選択を尊重すること。「理解すること」と「同意すること」は別であり、違いを認め合う姿勢が共存への鍵です。

Q
夫・妻の推し活が気持ち悪いと感じてしまいます
A

パートナーの推し活が理解できない場合は、適切な境界線を設けることが効果的です。推し活の話題を避けつつ、別の共通の話題で交流する、SNSの推し専用アカウントには踏み込まないなど。また、生活費を圧迫していないか、家族の時間が犠牲になっていないかを冷静に確認し、問題があれば話し合いましょう。

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